継承ガイドライン
概要
問題の背景
具体的方法
継承対象
進め方
業績悪化時の継承
上記状況の手法
事業継承の時期
事業継承の準備
廃業するには
後継者決定過程
親族内継承の税金
M&Aコラム一覧



 

当記事では、中小企業庁が出している「事業継承ガイドライン」をわかりやすく書き直したものです。

中小企業庁が開示している事業継承ガイドラインは読み解くには少々難解であるため、弊社独自見解で、わかりやすく概要を抽出し、わかりずらい点は弊社の解釈を加えたものです。

 


継承ガイドライン
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業績悪化時の継承
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日本において、中小企業は、小規模会社が85%、中規模会社が14%と、合計で企業数の99%を占めています。
また、従業員数でみれば、小規模企業が23%、中規模企業が47%と全体の70%を占めており、中小企業は、
日本経済と地域社会を支える重要な存在となっていることがわかります。


図:企業数の内訳(総務省平成26年)

図:従業員数の内訳(総務省平成26年)

これらの中小企業においては、経営者の交代率が70年代の後半より長期にわたって下落傾向にあり、これに伴って経営者の高齢化が進んでいます。

数字で見ると、経営者交代率は、1975年に平均5%であったものが、約10 年間の平均では 3.5%に低下、2011 年には 2.4%まで落ち込んでいます。これに伴い全国の経営者の平均年齢は59歳9ヵ月と、過去高水準に到達していることがわかります。


図:経営者の平均年齢と交代率(帝国データバンク)

平均年齢の分布をみると、1995年頃に は47歳前後であった経営者年齢のボリュームゾーンが、2015 年には66歳前後になっています。

中小企業経営者の引退年齢は、平均すると67〜70 歳程度であるため、今後5年程度で多くの中小企業が事業承継のタイ ミングを迎えることが想定され、これを円滑に進めることが日本経済の活力維持・向上のため大きな課題であると言えるでしょう。


図:経営者年齢分布(中小企業庁)

年、少子化問題や、親が子供の職業選択の自由をより尊重する考え方の広がり、また競合の激化や技術革新の速さで将来への不安材料が増し、子供や一族で事業を継ぐ者がいないといった後継者問題を抱える経営者が増えています。その結果、一定の安定的な業績を維持し、将来性にもまだまだ現状の経営を維持できると考えているにも関わらず、数年後には廃業もやむを得ないと考える経営者もあるのです。

こうした現状で、第三者への事業継承も含めて、中小企業における会社・事業承継を円滑に行うことが、次世代に技術やノウ ハウを確実に引き継ぐとともに、雇用を確保し、地域における経済活動への貢献を続けることにもつながるもの言えるのです。

業績に問題のない会社が廃業の道を選んでしまう背景には、企業においては存続可能性(ゴーイングコンサーン)が前提であることを認識していない経営者が多いこと、認識していても事業承継の計画と準備に日頃から着手することを日々の経営の中で置き去りにしていること、などが挙げられます。現に、中小企業経営者の高齢化が進んでいる状況の中、実際に準備に着手している企業は、既に70代、80代に達している経営者ですら半数に満たないというデータがあります。

図表11:経営者の年齢別にみた事業承継の準備状況(帝国データバンク)

では、実際に事業継承の準備には、どれだけの時間がかかるのでしょうか。

中小企業基盤整備機構の実態調査によると、あくまでも身内に後継者候補がいる場合ですが、後継者候補の育成期間も含めれば、事業承継の準備には5年〜10年程度必要との回答が多く、よって引退年齢を70才と設定した場合、60才のころから事業継承に向けた準備を開始する必要があると言えるでしょう。

もちろん、会社経営には定年はありませんし、70才になっても経営の最前線に立っている優秀な経営者もいるでしょう。しかし、経営者の交代があった中小企業においては、交代のなかった中小企業よりも経常利益率が高いとのデータもあるようで、事業承継を円滑に行うことができれば事業の成長の契機となると言えるのです。

そして、企業が商品・サービスを継続して提供し、また従業員の雇用を継続することで、日本経済と地域社会を支えることとなるのです。


図表13:経営者の交代による経常利益率の違い17



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事業継承の具体的な類型として、大まかに、親族内承継、役員・従業員承継、第三者承継(M&A等)の3つのスキームで説明します。

まずは、最も一般的なのは、親族内承継です。
こちらは、内外の関係者から心情的に受け入れられやすい、後継者の早期決定により長期の準備期間の確保が可能、所有と経営の一体的な承継が期待できるといった メリットがあります。 しかし、近年後継者問題で、事業承継全体に占める親族内承継の割合が急激に落ち込んで います。
その背景には、少子化問題や、息子・娘の職業選択の自由をより尊重する考え方の広がりがありますが、会社が後継者にとって引き継ぐに値する企業であるのか、事業モデルが陳腐化していないのかと言った将来への不安感があります。これを払拭するために、日頃から経営力の向上に努め、経営基盤を強化することにより、後継者が安心して引き継ぐことができる経営状態を維持してあげることが求められます。
また、事業承継を円滑に進めるためには、現経営者が自らの引退時期を定め、 そこから後継者の育成に必要な期間を逆算し、十分な準備期間を設けて、後継 者教育(技術やノウハウ、営業基盤の引継ぎを含む)に計画的に取り組むこと が大切です。

次に、(親族ではない)役員・従業員への承継です。
オーナー一族に後継者がいない場合にとられるスキームですが、後継者経営者としての能力のある人材を見極めて承継することができること、社内で長期間働いてきた従業員であれば経営方針等の一貫性を保ちやすいといったメリットがあります。このスキームの場合、後継候補者に会社を承継するための資金力・信用力が必要になります。
多くの場合、これが大きなハードルになってきましたが、最近は投資ファンドを活用したMBOなどが普及し、件数が増えています。また、このスキームの場合、親族株主が分散している場合、その了解を得ることが必要になりますので、現経営者のリーダーシップのもとで早期に親族間の調整を行い、関係者全員の同意と協力を取り付け、事後に紛争が生じないようしっかりと道筋を付けておくことが大切です。

そして第三者への承継です。
こちらは、親族や社内に適任者がいない場合に、M&Aを活用して広く候補者を外部に求めるものです。現経営者は、資金力・経営力のある第三者に会社を譲渡することにより、会社に新たな成長の機会を与えることとなり、一方で経営者自身は自身が創業した事業の創業者利益を得ることができ、また金融債務の連帯保証から脱することができる等のメリットがあり、事例として近年急増しています。
このM&Aの手続きについては、複雑で、かつ専門的な知識が要求されますので、これを成功させるためには、できるだけ早期に専門家に相談を行うことが望まれます。M&A等によっては最適なマッチング候補を見つけるまでの期間は、M&A対象企業の特性や時々の経済環境等に大きく左右されますが、数ヶ月〜数年と大きな幅 があることが一般的です。
相手候補が絞られた後も、トップ面談、条件交渉、買収監査(デューデリジェンス)等を経て、最終的に相手側との合意がなされます。このため、M&A等を実施する場合は、十分な時間的余裕をもって臨むことが大切です。


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会社を継承する場合、形式的には株式を譲渡するということになりますが、実質的に承継すべき経営資源は多岐にわたり、大別すると、「人(経営権)」、「資産」、「知的資産」の3要素と考えることができるでしょう。
ここでは、この3要素を説明していきます。

まず、人(経営権) の承継とは、具体的には会社トップの地位の継承、つまり代表取締役の交代と言うことになります。
現経営者が、その属人性を基に経営を創業し、成長させてきたとすれば、これを次に誰が継承するかは、今後の会社成長の成否を決する極めて重要なポイントと言うことになります。
よって、親族内承継や役員・従業員承継を選定とする場合は、後継者候補の選定を出来るだけ早期に開始し、継承準備期間を長くとることが望まれます。
また、社内外に適切な候補者がない場合は、M&Aによる外部の第三者への事業承継となりますが、その場合は継承した会社から人材が選ばれることになりますので、柔軟で戦略的なな対応ができるとも言えるでしょう。

次に、会社資産の承継です。
この場合の資産とは、事業を行うために必要な資産、例えば設備や不動産などの事業用資産、債権・債務の全てです。形式的には、株式を取得することで、これらの資産・債権・債務を継承します。
この場合、この株式を親族が贈与・相続により承継する場合、株式の評価価格によっては多額の贈与税・相続税が発生します。複数の親族に分散承継した結果、事業承継後の経営の安定が危ぶまれる等の可能性もあるので注意が必要です。
株式を役員・従業員に譲渡する場合は、後継者に充分な資金力・信用力ないことが多く、大きな課題となります。
また、資産の承継においては、現経営者個人の保証関係の整理・承継を行う必要があり、やはりより規模が大きく信用力のある会社による継承が望まれます。

3つ目の知的資産は、帳簿上の資産以外の無形の資産であり、企業における競争力の源泉である、人材、技術、技能、知的財産(特 許・ブランドなど)、組織力、経営理念、顧客とのネットワークなどの総称です。
中小企業においては、経営者と従業員の信頼関係も事業の円滑な運営において大きな比重を占めており、経営者の交代に伴って従業員の大量退職に至った事例もあります。このような事態は絶対に避けなければなりません。
また、この知的資産こそが会社の「強み」・「価値の源泉」であることを理解し、自身の会社においてはそれがどこにあるのかを棚卸して整理・認識し、これを継承することが重要です。

 

 



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<事業承継に向けた準備の進め方(1〜5のステップ)>

事業承継の円滑化のためには、事業承継は、いつかは必ず行わなければならない事という認識のもと、その準備に早期に着手し、専門家等の協力を得ながら事業承継スキームを検討、並行して収益力の改善・強化と経営改善に取り組みながら、これを着実に実行していく必要があります。

親族内・従業員承継の場合には、後継者とともに事業計画や資産の移転計画を含む事業承継計画を策定し、事業承継を実行します。第三者承継の場合は、事業承継計画を策定し、並行して引継ぎ先を選定するためのマッチングを実施し、M&Aを実行することになります。


ステップ1:事業承継に向けた準備の必要性の認識

一般的に、事業承継問題は、家族内の課題として捉えられがちであるために、いざ事業承継 の必要性に気付き専門家のもとを訪れた時には既に手遅れになっていたという事例が少なくありません。
このため、経営者が概ね60歳に達した場合は、身近な専門家やM&Aアドバイザリーに相談し、事業承継に向けた準備に着手すべきなのです。事業承継への取組は、本来経営者本人の自覚に委ねられるものですが、日常業務の多忙さ等から対応が後手に回りがちなため、M&Aアドバイザリー会社などからの提案には、決して他人事と思わず、積極的に耳を傾けることも重要です。


ステップ2:経営状況・経営課題等の把握

事業を後継者に円滑に承継するためのプロセスは、経営状況や経営課題、経営資源等の現状を冷静にかつ正確に分析・把握することから始まります。
例えば、事業別・部門別収益実態の把握、商品ごとの粗利分析、資産勘定の時価評価及び存否確認、また実態BS作成による純資産の再評価、会社と経営者個人間の債権債務・保障関係の明確化、業界内における会社の評価・位置付けの確認等、自社の現状を客観的に把握することが重要です。尚、詳しくは「中小企業の会計に関する指針」による説明で、別途補足します。


ステップ3:事業承継に向けた経営改善の継続

事業承継は、次の世代の経営者にバトンを渡し、さらに会社の事業を継続、発展させることを目的にしますが、バトンが渡すまでは事業の維持・発展に努め続けなければなりません。
よって、経営者は日々経営改善に努め、より良い状態で後継者に事業を引き継ぐ姿勢を持つことが望まれる。この経営改善は、業績改善や経費削減にとどまらず、商品やブランド イメージ、優良な顧客、金融機関や株主との良好な関係、優秀な人材、知的財 産権や営業上のノウハウ、法令遵守体制などを含み、継続した努力が必要です。
一方、会社のガバナンス体制・内部統制の向上に取り組むことも大切です。また、事業に必要のない資産や滞留在庫の処分、余剰負債の返済を行うなど会社のスリム化に取り組むことも重要です。 このような経営改善は、対応が多岐にわたるため、効率的に進めるために士業等の専門家やM&Aアドバイザー等の助言を得ることも有益です。


ステップ4−1:事業承継計画の策定

@ 中長期目標の設定
自社の現状とリスク等の把握が完了すれば、いよいよ事業承継計画の作成に入ります。そこでまず取り組むのが、中長期的な方向性・目標の設定です。例えば、10 年後に向けて現在の事業を維持していくのか、拡大していくのか。 また、現在の事業領域にとどまるのか、新事業に挑戦するのか、といった方向性を描くことが必要です。
この方向性に基づいて組織体制のあり方や、必要な設備投資計画等を検討し、さらに、売上や利益、マーケットシェアといった具体 的な指標に落とし込みます。

A 事業承継計画の策定
設定した中長期目標を踏まえ、資産・経営の承継の時期を盛り込んだ事業承継計画を策定します。 具体的な策定プロセスの概要は以下のとおりです。
また、前述のステップ2「経営状況・経営課題等の把握 を十分に実施することが、実効的な事業承継計画の策定の前提となることにも留意する必要があります。

ア) 自社の現状分析
経営状況・経営課題等の把握を通じて把握した自社の現状をもとに、次世代に向けた改善点や方向性を整理します。

イ) 今後の環境変化の予測と対応策・課題の検討
事業承継後の持続的な成長のために、変化する環境を的確に把握し、今後の変化を予測して適切な対応策を整理します。

ウ) 事業承継の時期等を盛り込んだ事業の方向性の検討
自社の現状分析、環境変化の予測を踏まえ、現在の事業を継続していくのか、あるいは事業の転換を図っていくのか等、事業領域の明確化を行います。さらに、それを実現するためのプロセスについても具体的なイメージを固めます。

エ) 具体的な目標の設定
前述の中長期目標の内容について、売上や利益、マーケットシェアといった 具体的な指標ごとの目標を設定します。

オ) 円滑な事業承継に向けたアクションプランの作成
以上の分析・整理を踏まえ、経営体制へ移行する際の具体的なアクションプランを作成します。


ステップ4−2:M&A等のマッチング実施

親族や従業員以外の第三者への事業承継を行う場合、 ステップ1〜3の行程を経た後、承継候補先を検討・絞り込み、交渉を行う、マッチングのステップに移行します。以下では、M&Aの実行に向けた事前準備に簡単に触れます。

1 M&Aアドバイザリー会社の選定
M&Aを実施する場合、自力で一連の作業を行うことが困難である場合が多いため、専門的なノウハウを有するアドバイザリー会社に相談を行う必要があります。

2 売却条件の検討
M&Aを行うにあたっては、どのようなスキームをとるか、 経営者自身の考えを明確にしておく必要があります。例えば、「会社全体をそのまま引き継いでもらう」 、「一部の事業だけ残したい」 、「従業員の雇用・処遇を 現状のまま維持したい」、「社名を残したい」等が考えられます。アドバイザリー会社に事前に売却条件を伝えた上で、条件に合った相手先を見つけることが最善の方法です。


ステップ5:事業承継の実行

ステップ1〜4を踏まえ、事業承継計画やM&A手続き等に沿って資産の移転や経営権の移譲を実行していきます。実行段階においては、状況の変化等を踏まえて随時事業承継計画を修正・ブラッシュアップする意識も必要です。
なお、この時点で税負担や法的な手続きが必要となる場合が多いため、M&Aアドバイザリー会社、弁護士、税理士、公認会計士等の専門家の協力を仰ぎながら実行することが望まれます。

 

 



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<業績が悪化している事業継承は可能か>

経営状態が悪化してしまった会社の場合でも、事業継承は可能です。
ただ、悪化の度合いにより、事業継承のスキームが全く異なってきますので、そこは注意が必要です。

まず、経営状態の悪化と言っても、売上が伸びずに例えば給与等の支払いが滞りがちである、あるいは
金融債務の返済をリスケ(先延ばし)しなければならないといった比較的深刻な事態に陥っている状況でないのであれば、一般的な事業継承案件として進めることが可能です。

会社によっては、事業継承した会社による顧客・販売網の水平統合、あるいは間接部門の統廃合、また従業員の意識改革などで、会社がスムーズに成長軌道を取り戻すケースが多々あります。

近年、後継者がいないために事業継承問題を抱えている経営者の方々においては、比較的年齢が高齢となっていることに伴う経営者の体力的な問題、あるいは事業モデルが最盛期に比してどうしても陳腐化しているといった問題がありますので、足元の業績が低迷しているケースが多いですが、そのために事業継承ができないと言うことは決してありません。場合によっては会社の有形・無形の資産が、宝の持ち腐れになっていることも多々ありますので、是非当社のような専門的なM&Aアドバイザリー会社に相談いただければと思います。

一方で、経営の悪化が深刻な場合は、むしろ会社再生案件として事業継承スキームを検討することが必要になります。その場合は、専門的な知識と経験、またプロジェクトを支える専門家チームが必要となりますので、やはり当社のようなM&Aアドバイザリー会社に早急に相談することが重要です。

会社の経営が深刻になった場合、代理人となる弁護士が必要なケースが出てきますが、弁護士事務所の場合、特に継承候補会社(スポンサー会社)を探索する業務については専門ではありませんし、そのような業務を提供していないのが一般的ですので、そこはM&Aアドバイザリー会社の機動力に託す必要があります。

様々な理由で経営が悪化した場合、経営者は何とか金融債務返済のリスケをして、なんとか自力再生したいと考えます。しかし、私たちの経験では、深刻な悪化に陥った会社には、再生するだけの意欲やエネルギーはもちろん、アイデア、発想力も残っていないのが常と言わざるを得ません。

場合によっては、金融機関向けに会計処理を調整すると言った問題の先送り、時間の引き延ばしに手を染めてしまうケースが出てきます。こうなりますと、たとえ軌道修正ができたとしても、自力再生には相当な時間がかかることとなり、それゆえ再生できる確率も低くなるのです。

このような状況においては、フレッシュな発想と行動力があり、そして何においても資金力があるスポンサー会社に経営を託すことが重要になりますので、このスポンサーを探索することができる能力が重要になってくるわけです。



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さて、ここからは、再生案件としての事業継承について、具体的な説明をさせていただきます。

一般的に中小企業が選択できる事業再生の方法は、公的整理と私的整理があります。経営悪化状態が深刻で裁判所が関与せざるを得ないのが公的整理で、具体的には民事再生及び会社更生があります。一方金融機関に債務の圧縮をお願いすることにより裁判所が関与せずに再生を行うのが私的整理で、中小企業再生支援協議会による調整及び事業再生ADRがあります。その概要を、それぞれいかに説明します。

  1. 民事再生(公的整理)

民事再生法に基づき、裁判所や監督委員の監督のもと、会社経営者自身が主体的に手続きに関与し、事業の継続を図るものです。民事再生において事業を譲渡する場合、再生手続開始決定後すぐに、裁判所の許可を得て事業譲渡を行うプレパッケージ方式と、民事再生手続きを最後まで待ち、債権者の承諾を得て再生計画に基づき、事業譲渡を行うケースがあります。このプレパッケージ方式の場合、民事再生を申請する前から水面下で継承候補会社(スポンサー会社)を探し出し、この会社と基本合意を行っておくことがポイントとなります。
民事再生の基本的な前提として、会社が破産するとなった場合に債権者に支払う配当率を上回る事業価値(対価)で、スポンサー会社が会社を継承することが必要です。この対価が、破産となった場合の配当を上回らない場合は、この会社を継続させる合理的な理由にならないからです。この意味で、できるだけ高額な対価で事業継承してくれるスポンサーを、民事再生の申請前に探し出し(プレパッケージ方式)、再生手続きを戦略的にかつスムーズに進めることがポイントになります。つまり、この民事再生においては、会社の代理人となる弁護士と、特にスポンサーの探索を機動的にかつ迅速に行うことができるM&Aのアドバイザリー会社が、プロアクティブでかつ戦略的な動きをとることが成功の秘訣言ってもよいでしょう。
民事再生申請後、裁判所が定める最終期限日までの間になかなかスポンサー会社が決まらない場合、スポンサー会社が手を挙げる可能性はどんどん減っていくと考えたほうがよいでしょう。

  1. 会社更生(公的整理)

会社更生法に基づき、裁判所の監督のもと、裁判所が選任する更生管財人により企業の再建を図るものです。民事再生は、会社経営者自身が主体的に再生の手続きを進めることができますが、会社更生はそれができないことが決定的に違います。利害関係者が少なく、スピードを優先する場合には、しばしば民事再生が選択されますが、利害関係者の数が多く調整が難しいという場合や、経営責任を明確にして経営陣を総退陣させることを前提にした場合は、会社更生法が適用されます。つまり、会社更生は、大企業に適した手続きと言えます。

尚、公的整理(民事再生及び会社更生)では、金融機関への弁済だけでなく、事業継続に不可欠な取引先への支払いも公平に停止されます。この結果、仮に過剰債務の整理に成功したとしても、その後の取引には重大な支障をきたし、事業の再建は困難となる場合がありますので、注意が必要です。

次に、法的整理のような手続きのルールはないものの、一般的には、債務者の申出により債務の支払いを一旦停止し、交渉により債務免除等に関する債権者の同意を得ていくものが私的整理です。事業譲渡や会社分割、第二会社方式等の手法が併せてとられることが多いです。主な手法は以下のとおりです。

中小企業再生支援協議会による調整
各都道府県に設置された中小企業再生支援協議会が公正中立な第三者としての立場から、中小企業の事業面、財務面の詳細な調査分析を実施し、かつ会社が窮境に陥った原因の分析等を行ったうえで、債務者が同協議会の支援を受けて策定した再生計画案を金融機関に提示し、金融債務の調整(圧縮)を行うものです。金融機関にとっては、公平・中立な支援協および専門家の調査検証経ることで、再生計画案の信頼性・実現性が高まり、受け入れやすくなります。また、会社、債権者のいずれにも一定の税務上のメリットがありますので、会社再生の実現の可能性が高まります。この再生方法は、支援協議会の検証・承認を得るために、若干の時間が必要になりますが、会社としては、最も柔軟に活用できるものとしてお勧めします。

尚、支援協議会による調整は、自力再生、及び事業継承を伴う再生つまりスポンサーによる再生のケースにも適用されますが、やはり当社の経験では、自力再生の可能性は多くの場合現実的ではなく、民事再生の場合と同様、事前にスポンサー(継承候補会社)を探索・確定して進めることが望まれます。また、スポンサー企業が、事業継承のために、一定の対価を会社に支払い、これを金融債務の返済に少しでも充当することで、金融機関の同意も得られやすくなることを認識すべきでしょう。

以下では、事前に会社を継承してもらうスポンサー探索を進め、会社継承のための対価も大まかな了解を得たうえで、再生を行うケースを簡単に説明します。

スポンサー会社の探索とコンタクト

スポンサー会社との条件交渉と基本合意の締結

会社から支援協議会への初期説明と支援協議会の検証

支援協議会の支援妥当性判断(初期判断)

支援協議会支援のもと会社とスポンサー会社による事業計画案の作成

支援協議会による事業計画書の合理性、公正性等の調査・検証(第二次判断)
↓ 
金融債務圧縮額を含む再生計画最終案の金融期間への提出と承認(再生計画成立)

金融債務圧縮、再生計画に定めた経営改善施策の実施

 

事業再生ADR(私的整理)
私的整理のうち、根拠法令に基づき制度化され、公正中立な第三者が関与して行われる手続のことを「準則型私的整理手続」といい、事業再生ADR手続が、裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律(ADR法)や、産業競争力強化法等の根拠法令に基づき制度化されたものです。具体的には、事業再生ADRの利用を申請した会社が策定した事業再生計画について、その適法性、合理性等に関する手続実施者の調査を受けるとともに、対象とされた債権者との間で合計3回の債権者会議および期日間の面談等を通じて協議を行い、対象債権者全員一致の同意により事業再生計画を成立させるものです。調整においては、双方の税負担を軽減し、債務者に対するつなぎ融資の円滑化等も図っています。

以上、いずれの方法をとる場合であっても、プロジェクトを戦略的にかつプロアクティブに進めることが成功のカギになりますので、できるだけ早くM&Aアドバイザリー会社に相談することをお勧めします。 この場合、M&Aアドバイザリー会社によっては、再生案件に関する専門的な知識・経験のない会社も多々ありますので、注意が必要です。

 

 




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適切なタイミングは、経営者の方の意欲や体力の問題とは思いますが、一般企業の定年退職が60才からを考えると、これが一つの目安にはなるのではないでしょうか。

例えば、中小企業庁の実施した調査によると、経営者が50歳代を過ぎ、年齢が上がるほど、投資意欲は低下し、リスク回避性向が高まることが明らかとなっています。また 経営者の交代があった中小企業において、交代のなかった中小企業よりも経常利益率が高いとの報告もあります。これらのことから、中小企業において早期に事業承継を実現することは、中小企業の事業活動の活性化に寄与するものであり、また地域経済の活力維持・向上のためにも、事業承継に向けた早期の取組を推進していく意義がありそうです。

図表:経営者の年代別に見た成長への意識
(出典:帝国データバンク「中小企業の成長と投資行動に関するアンケート調査」2015年12月)


  1. 図表:経営者の年代別に見た今後3年間の投資意欲
    (出典:帝国データバンク「中小企業の成長と投資行動に関するアンケート調査」2015年12月)

  2. 表:経営者の交代による経常利益率の違い
    (出典:帝国データバンク「COSMOS1企業単独財務ファイル」 、「COSMOS2 企 業概要ファイル」再編加工)






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1、まずは事業計画の作成を
昨今の社会経済が大きく変化する状況下においては、前(現)オーナーが営んできた事業モデルをそのままの形で承継することは必ずしも正しい承継方法ではありません。事業承継後に、新しい経営者が新たな視点をもって従来の事業を見直すことは、新たな成長ステージに入ることを可能にします。 むしろ、継承する側の会社は、従来の事業を継続するだけでは大きな成長は見込めないことを踏まえて事業継承をするべきなのです。
そのために、事業継承の意思決定においては、既存の事業を活かしつつ、会社が有する知的資産や事業環境を踏まえて新たな事業モデルを付加した中期事業計画をできるだけ具体的に作成し、それが現実的であるか否か前(現)オーナーの意見も聞きながらまとめあげることが重要です。

2、そして新しい組織の見直し
また、事業計画を作成するにあたり、より効率的でかつ戦略的な経営を実行できるよう、会社組織の見直しを行うことも重要です。例えば、M&Aにより新しい会社が事業を承継する場合、事業を取得した会社とのシナジー効果を最大化するために、経営資源の集中や管理機能の集約、マーケットの集約を通じた競争力の強化等を行うことで、経営の効率化を図り、強い会社として生まれ変わることができるのです。
さらに近年は、事業承継を契機として2つ以上複数の会社が統合し、経営資源の集中や管理機能の集約、マーケットの集約を通じた競争力の強化等を行うことで 経営の効率化を図り、かつ企業規模の拡大を実現して強い会社として生まれ変わり、グループとして株式を上場させるケースも出てきています。

図表:事業承継を契機とした統合による効率化の例

    このように、事業承継に際しては、継承後に展開する事業や継承後の事業計画の作成検証、継承後の会社組織再編の準備を入念に行うことが不可欠です。このような取組なくして、 事業継承後の更なる成長は期待できないと言っていいでしょう。




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これまでに営んできた事業モデル・商品が陳腐化し、また事業拠点が老朽化している等の理由により、事業の継続性に不安がある場合、身内に後継者候補がいたとしても事業継承がなかなか進まないことは、これまでに延べてきました。 このような場合は、廃業という選択肢を選ぶことなく、できるだけ早い段階で外部の第三社に経営権を譲渡し、新たなアイデアや経営意欲、また継承する会社との事業シナジーによる、新しい会社運営を託すことが望ましい旨、これまで説明してきました。
というのは、会社の経営においては、従業員、従業員の家族、金融機関、取引先、消費者と言った利害関係者が多数存在し、この利害関係者が、企業の運営が将来に亘って継続されることを前提として関わっているからです。近代の会計原則は、まさにこの企業の継続性の原則(ゴーイングコンサーン)の前提のもとにその論理が構築されているわけです。 しかしながら、最終的にどうしても事業継承を断念することとなった場合には、廃業を決断した経営者が、従業員や債権者に損失を与えることのなういよう、十分に経営余力のあるうちに、計画的に廃業の手続きを行う必要があることは言うまでもありません。

実際に会社を廃業する場合、中小企業経営者がどのような課題に直面したのか、中小企業庁が実施したアンケート調査の結果がありますのでご覧ください。これによると、「取引先との関係の清算」(40.7%)、「事業資産の売却」(21.3%)、従業員の雇用先の確保(16.4%)、債務整理(16.2%)が上位に挙げられています。

図表:廃業時に直面した課題
(出典:帝国データバンク「中小企業者・小規模事業者の廃業に関するアンケート 調査、2013年12月」

    このように、廃業にあたっては、多くの課題がありますので、これに対処するための具体的な対応策をしっかり検討し実行する必要があります。顧客との取引契約がどのようになっているか、契約終了に伴いペナルティーはないか、いつまでに告知すればよいか、売却可能資産の特定と売却可能性・時価・取引価格の把握、労務に関しては退縮金の算定やコンプライアンスリスクの評価、金融機関への告知のタイミングなどが列挙できます。

    これらの手続きを踏むにあたって、最初に取るべきことは、実態としての財務状況(実態バランスシート)を、事前に正確に把握することです。特に、会社を清算するにあたり、清算バランスシートを作成しますが、この時点で純資産がマイナスになっているとしたら、債務をすべて返済できないと言うことになるからです。このような場合は、最終的には個人資産の処分による金融機関借入の返済等の債務整理に着手必要に迫られます。 この実態あるいは清算バランスシートは、その作成目的により若干の違いがあり、ここでは詳細の説明を省きますが、共に言えるのは、債権債務を時価で評価し、実態のない債権債務は消し込まれたものということです。

    通常、ゴーイングコンサーンの原則に基づいた会計処理をする場合、期間損益に反映されない項目はバランスシート項目に仮計上され、例えば長期前払い費用などは、実態のない繰延資産として計上されています。このような資産は、一旦企業の継続性が途絶えた場合、損失として処理しなければなりません。一方、保有している土地建物などは、取得時の取得価格にて計上されているのが通常ですが、土地の時価が取得価格より大きく上回って入れば大きな含み資産となっている場合があります。ただし、土地の場合、売却し換金するには時間がかかる場合がありますので、これも考慮する必要があるでしょう。 このように、やむを得ず事業を廃業する場合は、事前の綿密な準備が必要になりますので、早めにFA会社や弁護士に相談いただくと同時に、最後まで事業継承を可能性をあきらめないで活動いただければと思います。





継承ガイドライン
概要
問題の背景
具体的方法
継承対象
進め方
業績悪化時の継承
上記状況の手法
事業継承の時期
事業継承の準備
廃業するには
後継者決定過程
親族内継承の税金
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Q:将来、会社を長男か次男に継いでもらおうと考えていますが、どのようなプロセスを踏んだらよいか

1、後継者候補の選定
後継者の選定は事業承継に向けた第一歩であり、事業承継の成否を決する重要な取組であることは間違いありません。そこで、一族内で事業の承継をお考えの場合、経営者は、思い込みではなく色々な要素を踏まえて後継者候補を早い段階から検討し、絞り込むことが望まれます。そして、後継者候補が絞り込まれ、後継者候補本人の原則的な同意も得られれば、一定の期間に必要な育成を行っていくことになります。

同時にここで忘れてはいけないのは、経営者は例えば長男であるから、あるいは娘より息子の方が、と言った理由から、経営者が考える後継者候補に、なんとなくあるいは強引に承継強いるということは避けるべきということです。また、どう見ても経営者としての資質を持ち合わせていない、あるいは人物的に向いていない場合、一族だからと言えども候補者とすべきではありません。

2、後継者候補との対話
事業を承継するということは、後継者の人生に大きな影響を与える難しい決断であることは間違いありません。昨今、価値観や事業モデルの多様化が進み、家業であってもなかなか承継に踏み切れないといったケースが増えています。ましてや、事業モデルが陳腐化し会社の未来に不安要素がある、金融債務も多く残っているとなると、事業を継承して経営にチャレンジしてみようといった、経営者にとって最も重要な意欲がわいてこないのです。

そのためには、後継者候補が絞り込まれれば、早い段階から本人との対話を重ね、会社の強み弱み、事業の実態、財政状態を開示するとともに、創業者あるいは現経営者の想いや経営 理念、そして会社が持つポテンシャルと事業計画を共有し、最終的に「よし、それなら自分が会社を継承して、会社を更に成長させよう」との自信と意欲を持って自ら決断をしてもらうことが必要です。つまり。決して「以心伝心」や「阿吽の呼吸」でなんとなく会社の未来を託すのではなく、事業の実態を正直に開示したうえで、ともに会社の未来をじっくり考えてもらい、事業継承への意欲を熟成させることが重要なのです。

3、後継者候補の育成
後継者候補が、事業承継に原則的に同意すれば、承継に向けて育成を行うことになります。中小企業の経営者には、会社の事業運営に関する現場の知見はもちろん、営業・マーケティング、財務会計、労務、法務等、経営管理等に関する幅広い知識が少なからず求められます。このような知識・経験を短期間で習得することは簡単ではありません。そこで、後継者の育成には十分な期間を準備し、必要な経験を積ませることが望ましいのは言うまでもありません。その方法と育成方法としては、大別して社内教育と社外教育が挙げられます。

図表19:後継者の育成方法について重視するこ
(出典:日本政策金融公庫総合研究所「日本公庫総研レポート 中小企業の事業承継」、2010年)

 

社内での教育は、会社に入社してもらい実際に事業に関与させる、最も自然な形ものです。会社の事業現場に直接関する知見や会社特有の運営方法を学ぶことができ、また他の従業員との信頼関係や一体感を築くことができるメリッ トがあります。また、現経営者と共に仕事をすることにより、経営理念を含めて経営者として考え方や動き方を直接受け継ぐことができる側面もあります。
社内においては、入社する年齢にもよりますが、初めから一定のポストに就くのではなく、例えば営業や製造の現場、総務、財務、労務といった各分野を一通り経験させるローテーションプログラムを組むことにより、会社全般を通して実態把握を行い、問題意識を持ってもらうことが重要です。特に、経営者が財務会計の知識を有することは、近代経営においては大変重要です。財務部門に長く配置する必要はありませんが、日頃から財務・経営管理上の知識に基づいて、経営上のデータをモニターすることを習慣化させることが望まれます。

一方で、経営企画といった経営の中枢を担ってもらうことで、会社のおかれた事業領域の知見を深め、そこで会社がどのような位置づけにあるのか、その事業領域事態に変化・再編が起きていないか判断しながら、中長期的な事業計画や成長戦略の作成に携わる機会を与えることもお勧めします。

社外での教育においては、取引先あるいは自社よりも規模の大きな同業他社で勤務経験を積むことが代表的な方法です。一般的には、後継候補者が就学後すぐに入社し、一定期間勤めたあと自社に戻ると言うケースです。これにより、自社よりも高度な経営手法や技術、また会社のあり方について、自社では学べない経験を積むことができ、また外から自社を客観的に見る視点を持つことができ、それが自社の改革・成長を促すきっかけとなるといったメリットが挙げられます。ただし、他社における勤務は、当初より育成として受け入れてもらう前提となりますので、受け入れる側としては、一定期間後には自社に戻ることを考えると、人材への投資もしづらくなり、戦略的な部門への配置も難しいといった実態もあることは認識すべきでしょう。

一方、外部のセミナー等で体系的な教育を受けることも、社外教育として挙げられます。 こちらは、社内教育と並行して行うことができます。例えば、各種トレーニング会社の「管理職セミナー」や「リーダーシップセミナー」等に参加する、商工会・商工会議所や金融機関等が主催する「後継者塾」や「経営革新塾」等に参加する、また大学や専門学校等の教育機関で、経営学や法務、また財務会計理論を学ぶもので、経営に関する広範かつ体系的な知識を得ることが期待できます。ただし、これらの方法では、どうしても短期間での習得にならざるを得ないため、一過性の意識改革で終わる可能性が高いことも認識するべきでしょう。何よりも重要なのは、後継者候補に事業を継承する自覚を持ってもらい、自身で継続的に自己啓蒙に励むことが望まれるところです。

4、親族等との調整
一族内で事業承継する場合、家業の次の後継者が誰になるのかということは、経営者個人の問題にとどまらず、経営者の兄弟、経営者の子供、また配偶者をはじめとする親族にとっても強い関心事であります。これは、例えば家業な何代にも引き継がれ、株式が親族内で分散しているといったことであれば、株主たる親族としての大きな関心であり、また経営者の推定相続人にとっては、自身が将来的にどのような財産を相続するかという関心でもあるのです。また、後継者が事業承継後に株主たる親族等の賛同が得られ経営に関する協力が得されることは、後継者による円滑な事業運営にとっても不可欠な要素であることに間違いがありません。 そこで、経営者のリーダーシップのもと、日ごろから家族及び親族との対話を図り、時間をかけて親族の同意を得ていくことが極めて重要になるのです。

5、従業員・取引先・金融機関への周知
一方、会社において日常的に経営者と接している従業員や、取引先・金融機関にとって、次の後継者候補が誰になり、どのような計画で事業承継が行われるかは、言うまでもなく大きな関心ごとであります。従業員にとってみれば、後継者候補がいつまでも決まらなければ、会社の将来性に対する不安が募りことにもなります。そこで、できれば早いうちに後継者候補や将来の事業承継計画を従業員にも周知しておくべきでしょう。また、取引先や金融機関に対して、事業承継の話題を持ち出すこと自体が信用問題につながると考え、避けてしまう経営者もありますが、取引先や金融機関にとって、経営者が高齢であるのに事業承継の計画が明示されないよりは、後継者候補の紹介を受け、事業承継に向けた計画を明示されたほうが、将来にわたって取引関係を継続していく上でも有益であることは明らかなのです。

6、経営の承継の実行
事業の後継者が確定し、一定期間の育成が行われ、かつ関係者への周知も行われれば、実際に事業を後継者に承継する段階を迎えます。会社形態であれば、代表取締役の交代による経営権の承継と、株式の移転による経営権の承継を行うこととなります。経営権については、現経営者が代表取締役を辞任し、後継者が代表取締役に就任するための会社法上の手続き取られます。この際、取締役会設置会社においては取締役会決議が、取締役会非設置会社においては定款の定めに従った手続きが必要となります。株式については、贈与等の方法によって株主たる地位を後継者に承継し、会社の株主名簿の書き換えや、贈与であれば贈与税の申告等の手続きが必要となります。

個人事業主の場合には、ある事業の代表者を示す客観的な概念が存在しないため、一般的には現経営者が税務署に対して「廃業届」を提出し、後継者は「開業届」を提出することと なります。

以上です。





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具体的方法
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廃業するには
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親族内継承の税金
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Q)長男に会社を承継しようと思いますが、どのような税金がかかりますか、教えてください。

親族内承継においては、現経営者から後継者に対し、会社株式や事業用資産を、譲渡ではなく、贈与・相続により移転する方法が一般に用いられます。この場合、贈与税・相続税の負担が発生しますが、事業承継直後の後継者においては、資金力が十分でなないケースが多く、場合によっては会社の財産が後継者の納税資金に充てられることがしばしばあります。このような場合、事業承継直後の会社に多額の資金負担が生じることとなり、 事業承継の大きな障害となってしまいますので、事前にどのような額になるのか、どのような節税対策があるのか、しっかり把握することが重要です。

1、暦年課税による贈与税
贈与税の課税方法には暦年課税と相続時精算課税の2つの方式があります。暦年課税は、1年間に贈与を受けた財産の価額の合計額をもとに贈与税を課税する方式です。ここでの合計額は、同じ人から2回以上贈与を受けた場合や、同一年に2人以上から贈与を受けた場合に、それらを合計するという意味です。

暦年課税における贈与税は、贈与を受けた財産の価額から基礎控除額110万円を差し引いた金額について課せられ、贈与者と受贈者の続柄、また受贈者の年齢によって、税率は10% 〜55%の累進課税となります。そのため、株式の評価額が高い場合には贈与税も非常に高額となり、後継者に多くの株式を贈与することが困難となる場合がありますので、注意が必要です。

尚、税率の体系として、直系尊属(父母や祖父母など)以外の贈与者(兄弟や夫婦など)から贈与を受けた場合や、直系尊属の贈与者から贈与を受けかつ受贈者の年齢が20歳未満の場合は「一般税率」、一方、直系尊属の贈与者から贈与を受けかつ受贈者の年齢が20歳以上の場合は「特例税率」が適用されることになります。いかがその税率です。

・一般贈与財産用(一般税率)

・特例贈与財産用(特例税率)

例えば、課税価格400万円の一般贈与財産の贈与を受けた場合、次のような計算方法になります。
( 400万円(課税価格)- 110万円(基礎控除額))×15%(一般税率)- 10万円(控除額)=33万5,000円(贈与税額)

2、相続時精算課税による贈与税
相続時精算課税は、贈与者が60歳以上の父母または祖父母であり、受贈者が 20 歳以上かつ贈与者の推定相続人である子又は孫に該当する場合に選択できる課税方式です。税率は一律20%、特別控除額は最大2500万円となっています。最大2500万円というのは1年の金額ではなく、1人の贈与者あたりの金額です。

この方式を選択した場合、相続が発生すると相続時精算課税が適用される財産の価額と、別途相続または遺贈を受けた財産の価額の合計をもとに計算した相続税額から、すでに支払った相続時精算課税に係る贈与税分の税額控除が受けられます。いわば「相続税の先払い方式」なのです。

例えば、自分の親から1年目に2,000万円、2年目にも2,000万円の贈与を受けた場合は、まず1年目の2,000万円は特別控除額の2,500万円を利用すると贈与税額は0円になります。しかし、2年目の2,000万円は残った特別控除額の500万円を差し引いても1500万円は残ります。この金額に一律税率で20%をかけた300万円が、贈与税額になります。

ただし、一旦相続時精算課税制度を選択すると、その後同一の贈与者からの贈与については同制度が強制適用され、暦年課税制度によることができないため、注意すべきです。また、贈与者の相続時には、贈与財産の贈与時の価額が相続財産に合算されるため、贈与財産の価額が相続時に上昇した場合には有利に、下落した場合には不利に働きます。従って、暦年課税制度と相続時精算課税制度のいずれによるかは、贈与が可能な期間や所有財産の価額の動向を勘案して慎重に選択する必要があります。

 

参考:暦年課税制度と相続時精算課税制度の比較



3、事業承継税制による相続税及び贈与税
平成20年に成立した経営承継円滑化法に基づき、平成 21 年度税制改正により、「非上場株式等についての相続税及び贈与税の納税猶予・免除制度」(事業承継税制)が創設されています。こちらは、非上場株式等についての制度ですので、利用者は会社形態の経営者が想定され、個人事業主の経営者の利用は想定されません。

事業承継税制は、事業承継に伴って発生する相続税・贈与税の負担により事業継続に支障が生ずることを防止するため、一定の要件のもと、その納税を猶予・免除する制度です。事業承継税制(相続税)を利用した場合、下記の事例のように、大きな税負担の軽減効果が期待できます。


3-1、相続税の納税猶予・免除制度

この制度は、後継者が相続又は遺贈により取得した非上場株式について、相続開始前から後継者が既に保有していた完全議決権株式を含めて会社の発行済完全議決権株式の総数の3分の2を上限として、係る相続税の80%の納税が猶予される制度です。

本制度の適用を受けるためには、経営承継円滑化法に基づく経済産業大臣の 「認定」を受け、5年間平均8割の雇用維持等の要件を満たす必要があります。要件を満たせなかった場合には、猶予中の税額を納付しなければなりません。

また、以下の場合に、猶予された相続税の一部又は全部が免除されます。
@後継者が死亡した場合
A会社が倒産した場合
B後継者が次の後継者へ贈与を行った場合
C同族関係者以外に株式を全部譲渡した場合
(譲渡額が猶予額に満たない場合、その差額部分は免除され、譲渡額を納付すれば足りる)


図:相続税の納税猶予・免除制度(概要)

 

3-2、贈与税の納税猶予・免除制度(事業承継税制/贈与税)
後継者が贈与により取得した非上場株式について、贈与前から後継者が既に保有していた完全議決権株式を含めて会社の発行済完全議決権株式の総数の3 分の2を上限として、係る贈与税の100%の納税が猶予される。 要件及び効果については、以下の通り、相続税の納税猶予・免除制度と概ね同様である。


図:贈与税の納税猶予・免除制度(概要)

 

3-3、贈与税の納税猶予中に先代経営者が死亡した場合
贈与税の納税猶予(免除制度)の適用を受けている間に、先代経営者(贈与者)が死亡した場合には、後継者の猶予されていた贈与税は免除され、代わりに相続税が課税されることとなます。ただし、一定の手続き(切替確認)を受けると、上記の相続税の納税猶予・免除制度に移行することとなります。

以上のとおり、事業承継税制では、相続税と贈与税の納税猶予及び免除制度を組み合わせて活用することで、相続のみならず生前贈与による株式の承継に伴う税負担を軽減することができ、将来にわたる円滑な事業承継が可能となります。

4、小規模宅地等の特例
こちらは、一定の宅地等を相続した場合には、相続税の課税価格から一定の割合を減額する制度です。宅地等の用途ごとの評価額の減額割合、適用対象となる土地面積の上限は以下のとおりとなります。

具体的には、被相続人等の事業の用に供されていた特定事業用宅地は、申告期限まで事業を継続すること等の条件を満たした場合、400 uまで評価額の 80% が減額されます。

この制度は、土地を事業用に利用している個人事業主にとって、 非常に有用な制度であるといえます。 例えば、500 u、総額 1 億円の土地、相続人が子供 1 人の場合の計算例は、

【減額される額】1億円× 400u/500u ×80%=6,400万円
【相続税の課税価格】1億円−6,400万円=3,600万円
【課税遺産総額】3,600万円−3,600万円(基礎控除額)=0円

となります。

この制度は、経営者個人の所 有する土地を自社の事業に利用している会社経営者による利用が想定される。

5、退職金に係る税金
一般に、退職金はその支給を受けた人の所得税等の課税対象となりますが、被相続人の死亡後3年以内に支給が確定した退職金は、相続税の課税対象となります。以下、その内容と課税について説明します。

5-1、相続財産とみなされる退職手当金等
被相続人の死亡によって、被相続人に支給されるべきであった退職引当金、功労金その他これらに準ずる給与は、退職引当金といい、これを受け取る場合で、被相続人の死亡後3年以内に支給が確定したものは、相続財産とみなされて相続税の課税対象となります。

尚、死亡後3年以内に支給が確定したものとは次のものをいいます。
(1)死亡退職で支給される金額が被相続人の死亡後3年以内に確定したもの
(2)生前に退職していて、支給される金額が被相続人の死亡後3年以内に確定したもの

5-2、非課税となる退職手当金等
相続人が受け取った退職手当金等は、その全額が相続税の対象となるわけではありません。
全ての相続人が取得した退職手当金等を合計した額が、非課税限度額以下のときは課税されません。

500万円 × 法定相続人の数 = 非課税限度額

尚、相続人以外の人が取得した退職手当金等には、非課税の適用はありません。

5-3、課税される退職手当金等
一方、全ての相続人が受け取った退職手当金等を合計した額が、非課税限度額を超えるときの超える部分の金額及び相続人以外の者が受け取った退職手当金等の金額が相続税の課税対象になります。

相続人が受け取った退職手当金等のうち課税される退職手当金等の金額について、具体的には、次の算式により計算します。

5-4.事例
被相続人の死亡によって退職手当金等を次のとおり受け取った場合


(1)非課税限度額の計算
500万円×3人(法定相続人の数)=1,500万円
(Cは相続を放棄していますが、法定相続人の数には算入します)

(2)各人の非課税金額の計算

(3)各人の課税価格に算入される退職手当金等の額



以上です。










  一部のM&Aコンサル会社では、紹介者などを通した情報収集提供活動、同時・広範囲な営業活動など、機密保守意識の低い行動をとる会社があります。これら不用意な行動は、匿名といえども、推測に基づく情報漏洩や企業価値の低下の引き金になることがあります。一例を挙げればWEB上に匿名で「売り案件/買い案件」と一覧を出す会社は注意が必要です。私共の元にはセカンドオピニオンとして依頼を受けるケースが非常に多くなっております。