継承ガイドライン
概要
問題の背景
具体的方法
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当記事では、中小企業庁が出している「事業継承ガイドライン」をわかりやすく書き直したものです。

中小企業庁が開示している事業継承ガイドラインは読み解くには少々難解であるため、弊社にてわかりやすく概要を中質紙し、わかりずらい点は弊社の解釈を加えたものです。

 


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日本において、中小企業は、小規模会社が85%、中規模会社が14%と、合計で企業数の99%を占めています。
また、従業員数でみれば、小規模企業が23%、中規模企業が47%と全体の70%を占めており、中小企業は、
日本経済と地域社会を支える重要な存在となっていることがわかります。


図:企業数の内訳(総務省平成26年)

図:従業員数の内訳(総務省平成26年)

これらの中小企業においては、経営者の交代率が70年代の後半より長期にわたって下落傾向にあり、これに伴って経営者の高齢化が進んでいます。

数字で見ると、経営者交代率は、1975年に平均5%であったものが、約10 年間の平均では 3.5%に低下、2011 年には 2.4%まで落ち込んでいます。これに伴い全国の経営者の平均年齢は59歳9ヵ月と、過去高水準に到達していることがわかります。


図:経営者の平均年齢と交代率(帝国データバンク)

平均年齢の分布をみると、1995年頃に は47歳前後であった経営者年齢のボリュームゾーンが、2015 年には66歳前後になっています。

中小企業経営者の引退年齢は、平均すると67〜70 歳程度であるため、今後5年程度で多くの中小企業が事業承継のタイ ミングを迎えることが想定され、これを円滑に進めることが日本経済の活力維持・向上のため大きな課題であると言えるでしょう。


図:経営者年齢分布(中小企業庁)

年、少子化問題や、親が子供の職業選択の自由をより尊重する考え方の広がり、また競合の激化や技術革新の速さで将来への不安材料が増し、子供や一族で事業を継ぐ者がいないといった後継者問題を抱える経営者が増えています。その結果、一定の安定的な業績を維持し、将来性にもまだまだ現状の経営を維持できると考えているにも関わらず、数年後には廃業もやむを得ないと考える経営者もあるのです。

こうした現状で、第三者への事業継承も含めて、中小企業における会社・事業承継を円滑に行うことが、次世代に技術やノウ ハウを確実に引き継ぐとともに、雇用を確保し、地域における経済活動への貢献を続けることにもつながるもの言えるのです。

業績に問題のない会社が廃業の道を選んでしまう背景には、企業においては存続可能性(ゴーイングコンサーン)が前提であることを認識していない経営者が多いこと、認識していても事業承継の計画と準備に日頃から着手することを日々の経営の中で置き去りにしていること、などが挙げられます。現に、中小企業経営者の高齢化が進んでいる状況の中、実際に準備に着手している企業は、既に70代、80代に達している経営者ですら半数に満たないというデータがあります。

図表11:経営者の年齢別にみた事業承継の準備状況(帝国データバンク)

では、実際に事業継承の準備には、どれだけの時間がかかるのでしょうか。

中小企業基盤整備機構の実態調査によると、あくまでも身内に後継者候補がいる場合ですが、後継者候補の育成期間も含めれば、事業承継の準備には5年〜10年程度必要との回答が多く、よって引退年齢を70才と設定した場合、60才のころから事業継承に向けた準備を開始する必要があると言えるでしょう。

もちろん、会社経営には定年はありませんし、70才になっても経営の最前線に立っている優秀な経営者もいるでしょう。しかし、経営者の交代があった中小企業においては、交代のなかった中小企業よりも経常利益率が高いとのデータもあるようで、事業承継を円滑に行うことができれば事業の成長の契機となると言えるのです。

そして、企業が商品・サービスを継続して提供し、また従業員の雇用を継続することで、日本経済と地域社会を支えることとなるのです。


図表13:経営者の交代による経常利益率の違い17



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事業継承の具体的な類型として、大まかに、親族内承継、役員・従業員承継、第三者承継(M&A等)の3つのスキームで説明します。

まずは、最も一般的なのは、親族内承継です。
こちらは、内外の関係者から心情的に受け入れられやすい、後継者の早期決定により長期の準備期間の確保が可能、所有と経営の一体的な承継が期待できるといった メリットがあります。 しかし、近年後継者問題で、事業承継全体に占める親族内承継の割合が急激に落ち込んで います。
その背景には、少子化問題や、息子・娘の職業選択の自由をより尊重する考え方の広がりがありますが、会社が後継者にとって引き継ぐに値する企業であるのか、事業モデルが陳腐化していないのかと言った将来への不安感があります。これを払拭するために、日頃から経営力の向上に努め、経営基盤を強化することにより、後継者が安心して引き継ぐことができる経営状態を維持してあげることが求められます。
また、事業承継を円滑に進めるためには、現経営者が自らの引退時期を定め、 そこから後継者の育成に必要な期間を逆算し、十分な準備期間を設けて、後継 者教育(技術やノウハウ、営業基盤の引継ぎを含む)に計画的に取り組むこと が大切です。

次に、(親族ではない)役員・従業員への承継です。
オーナー一族に後継者がいない場合にとられるスキームですが、後継者経営者としての能力のある人材を見極めて承継することができること、社内で長期間働いてきた従業員であれば経営方針等の一貫性を保ちやすいといったメリットがあります。このスキームの場合、後継候補者に会社を承継するための資金力・信用力が必要になります。
多くの場合、これが大きなハードルになってきましたが、最近は投資ファンドを活用したMBOなどが普及し、件数が増えています。また、このスキームの場合、親族株主が分散している場合、その了解を得ることが必要になりますので、現経営者のリーダーシップのもとで早期に親族間の調整を行い、関係者全員の同意と協力を取り付け、事後に紛争が生じないようしっかりと道筋を付けておくことが大切です。

そして第三者への承継です。
こちらは、親族や社内に適任者がいない場合に、M&Aを活用して広く候補者を外部に求めるものです。現経営者は、資金力・経営力のある第三者に会社を譲渡することにより、会社に新たな成長の機会を与えることとなり、一方で経営者自身は自身が創業した事業の創業者利益を得ることができ、また金融債務の連帯保証から脱することができる等のメリットがあり、事例として近年急増しています。
このM&Aの手続きについては、複雑で、かつ専門的な知識が要求されますので、これを成功させるためには、できるだけ早期に専門家に相談を行うことが望まれます。M&A等によっては最適なマッチング候補を見つけるまでの期間は、M&A対象企業の特性や時々の経済環境等に大きく左右されますが、数ヶ月〜数年と大きな幅 があることが一般的です。
相手候補が絞られた後も、トップ面談、条件交渉、買収監査(デューデリジェンス)等を経て、最終的に相手側との合意がなされます。このため、M&A等を実施する場合は、十分な時間的余裕をもって臨むことが大切です。


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会社を継承する場合、形式的には株式を譲渡するということになりますが、実質的に承継すべき経営資源は多岐にわたり、大別すると、「人(経営権)」、「資産」、「知的資産」の3要素と考えることができるでしょう。
ここでは、この3要素を説明していきます。

まず、人(経営権) の承継とは、具体的には会社トップの地位の継承、つまり代表取締役の交代と言うことになります。
現経営者が、その属人性を基に経営を創業し、成長させてきたとすれば、これを次に誰が継承するかは、今後の会社成長の成否を決する極めて重要なポイントと言うことになります。
よって、親族内承継や役員・従業員承継を選定とする場合は、後継者候補の選定を出来るだけ早期に開始し、継承準備期間を長くとることが望まれます。
また、社内外に適切な候補者がない場合は、M&Aによる外部の第三者への事業承継となりますが、その場合は継承した会社から人材が選ばれることになりますので、柔軟で戦略的なな対応ができるとも言えるでしょう。

次に、会社資産の承継です。
この場合の資産とは、事業を行うために必要な資産、例えば設備や不動産などの事業用資産、債権・債務の全てです。形式的には、株式を取得することで、これらの資産・債権・債務を継承します。
この場合、この株式を親族が贈与・相続により承継する場合、株式の評価価格によっては多額の贈与税・相続税が発生します。複数の親族に分散承継した結果、事業承継後の経営の安定が危ぶまれる等の可能性もあるので注意が必要です。
株式を役員・従業員に譲渡する場合は、後継者に充分な資金力・信用力ないことが多く、大きな課題となります。
また、資産の承継においては、現経営者個人の保証関係の整理・承継を行う必要があり、やはりより規模が大きく信用力のある会社による継承が望まれます。

3つ目の知的資産は、帳簿上の資産以外の無形の資産であり、企業における競争力の源泉である、人材、技術、技能、知的財産(特 許・ブランドなど)、組織力、経営理念、顧客とのネットワークなどの総称です。
中小企業においては、経営者と従業員の信頼関係も事業の円滑な運営において大きな比重を占めており、経営者の交代に伴って従業員の大量退職に至った事例もあります。このような事態は絶対に避けなければなりません。
また、この知的資産こそが会社の「強み」・「価値の源泉」であることを理解し、自身の会社においてはそれがどこにあるのかを棚卸して整理・認識し、これを継承することが重要です。

 

 



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<事業承継に向けた準備の進め方(1〜5のステップ)>

事業承継の円滑化のためには、事業承継は、いつかは必ず行わなければならない事という認識のもと、その準備に早期に着手し、専門家等の協力を得ながら事業承継スキームを検討、並行して収益力の改善・強化と経営改善に取り組みながら、これを着実に実行していく必要があります。

親族内・従業員承継の場合には、後継者とともに事業計画や資産の移転計画を含む事業承継計画を策定し、事業承継を実行します。第三者承継の場合は、事業承継計画を策定し、並行して引継ぎ先を選定するためのマッチングを実施し、M&Aを実行することになります。


ステップ1:事業承継に向けた準備の必要性の認識

一般的に、事業承継問題は、家族内の課題として捉えられがちであるために、いざ事業承継 の必要性に気付き専門家のもとを訪れた時には既に手遅れになっていたという事例が少なくありません。
このため、経営者が概ね60歳に達した場合は、身近な専門家やM&Aアドバイザリーに相談し、事業承継に向けた準備に着手すべきなのです。事業承継への取組は、本来経営者本人の自覚に委ねられるものですが、日常業務の多忙さ等から対応が後手に回りがちなため、M&Aアドバイザリー会社などからの提案には、決して他人事と思わず、積極的に耳を傾けることも重要です。


ステップ2:経営状況・経営課題等の把握

事業を後継者に円滑に承継するためのプロセスは、経営状況や経営課題、経営資源等の現状を冷静にかつ正確に分析・把握することから始まります。
例えば、事業別・部門別収益実態の把握、商品ごとの粗利分析、資産勘定の時価評価及び存否確認、また実態BS作成による純資産の再評価、会社と経営者個人間の債権債務・保障関係の明確化、業界内における会社の評価・位置付けの確認等、自社の現状を客観的に把握することが重要です。尚、詳しくは「中小企業の会計に関する指針」による説明で、別途補足します。


ステップ3:事業承継に向けた経営改善の継続

事業承継は、次の世代の経営者にバトンを渡し、さらに会社の事業を継続、発展させることを目的にしますが、バトンが渡すまでは事業の維持・発展に努め続けなければなりません。
よって、経営者は日々経営改善に努め、より良い状態で後継者に事業を引き継ぐ姿勢を持つことが望まれる。この経営改善は、業績改善や経費削減にとどまらず、商品やブランド イメージ、優良な顧客、金融機関や株主との良好な関係、優秀な人材、知的財 産権や営業上のノウハウ、法令遵守体制などを含み、継続した努力が必要です。
一方、会社のガバナンス体制・内部統制の向上に取り組むことも大切です。また、事業に必要のない資産や滞留在庫の処分、余剰負債の返済を行うなど会社のスリム化に取り組むことも重要です。 このような経営改善は、対応が多岐にわたるため、効率的に進めるために士業等の専門家やM&Aアドバイザー等の助言を得ることも有益です。


ステップ4−1:事業承継計画の策定

@ 中長期目標の設定
自社の現状とリスク等の把握が完了すれば、いよいよ事業承継計画の作成に入ります。そこでまず取り組むのが、中長期的な方向性・目標の設定です。例えば、10 年後に向けて現在の事業を維持していくのか、拡大していくのか。 また、現在の事業領域にとどまるのか、新事業に挑戦するのか、といった方向性を描くことが必要です。
この方向性に基づいて組織体制のあり方や、必要な設備投資計画等を検討し、さらに、売上や利益、マーケットシェアといった具体 的な指標に落とし込みます。

A 事業承継計画の策定
設定した中長期目標を踏まえ、資産・経営の承継の時期を盛り込んだ事業承継計画を策定します。 具体的な策定プロセスの概要は以下のとおりです。
また、前述のステップ2「経営状況・経営課題等の把握 を十分に実施することが、実効的な事業承継計画の策定の前提となることにも留意する必要があります。

ア) 自社の現状分析
経営状況・経営課題等の把握を通じて把握した自社の現状をもとに、次世代に向けた改善点や方向性を整理します。

イ) 今後の環境変化の予測と対応策・課題の検討
事業承継後の持続的な成長のために、変化する環境を的確に把握し、今後の変化を予測して適切な対応策を整理します。

ウ) 事業承継の時期等を盛り込んだ事業の方向性の検討
自社の現状分析、環境変化の予測を踏まえ、現在の事業を継続していくのか、あるいは事業の転換を図っていくのか等、事業領域の明確化を行います。さらに、それを実現するためのプロセスについても具体的なイメージを固めます。

エ) 具体的な目標の設定
前述の中長期目標の内容について、売上や利益、マーケットシェアといった 具体的な指標ごとの目標を設定します。

オ) 円滑な事業承継に向けたアクションプランの作成
以上の分析・整理を踏まえ、経営体制へ移行する際の具体的なアクションプランを作成します。


ステップ4−2:M&A等のマッチング実施

親族や従業員以外の第三者への事業承継を行う場合、 ステップ1〜3の行程を経た後、承継候補先を検討・絞り込み、交渉を行う、マッチングのステップに移行します。以下では、M&Aの実行に向けた事前準備に簡単に触れます。

1 M&Aアドバイザリー会社の選定
M&Aを実施する場合、自力で一連の作業を行うことが困難である場合が多いため、専門的なノウハウを有するアドバイザリー会社に相談を行う必要があります。

2 売却条件の検討
M&Aを行うにあたっては、どのようなスキームをとるか、 経営者自身の考えを明確にしておく必要があります。例えば、「会社全体をそのまま引き継いでもらう」 、「一部の事業だけ残したい」 、「従業員の雇用・処遇を 現状のまま維持したい」、「社名を残したい」等が考えられます。アドバイザリー会社に事前に売却条件を伝えた上で、条件に合った相手先を見つけることが最善の方法です。


ステップ5:事業承継の実行

ステップ1〜4を踏まえ、事業承継計画やM&A手続き等に沿って資産の移転や経営権の移譲を実行していきます。実行段階においては、状況の変化等を踏まえて随時事業承継計画を修正・ブラッシュアップする意識も必要です。
なお、この時点で税負担や法的な手続きが必要となる場合が多いため、M&Aアドバイザリー会社、弁護士、税理士、公認会計士等の専門家の協力を仰ぎながら実行することが望まれます。

 

 








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