企業の評価手法
概要
内部からの漏洩
オーナーから漏洩
総括
M&Aコラム一覧



 

M&Aプロジェクトにおいて、機密保守はあらゆるプロセスにおいて徹底される必要がある旨、
冒頭の「他社との違い」で若干触れさせていただきました。

M&Aのプロジェクトにおいて、会社が売却を考えているということが漏れた場合、たとえその目的が事業継承のケース、あるいは戦略的スキームであったとしても、憶測による誤った風評が起こり、日常行っている販売や仕入等の信用取引に支障をきたすことが起こり得ます。会社の内部においては、従業員の不安や意識の低下を招き、場合によっては一部の従業員が退職してしまうリスクもあるわけです。

また、M&Aのプロセスにおいては、会社のインフォメーションメモランダム(案件概要書)が、
ソーシング(提携相手候補探索)の過程において、同業他社を含む相手候補先企業に開示されることになります。

このインフォメーションメモランダムは、ソーシングの初期段階では、完全な匿名で財務データや営業上の情報も限定的でシンプルな様式に留まりますが、ソーシングが進みますと、有力な候補先にはその会社の名前が明かされ、より詳しいデータ・資料が開示されることになります。これらは、相手が同業他社にとっては、有用なデータが含まれている可能性もありますから、開示する場合は十分に先方の興味度を確認したうえで、機密保持契約を締結することが前提となります。

それでは、M&Aのプロジェクトにおいて、どのような場合に機密が漏えいしてしまうのか、具体的な例を踏まえて考えてみたいと思います。

 


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M&Aを推進するにあたっては、アドバイザリー会社(FA会社)、会計士、税理士、弁護士などが関与しますが、特にFA会社は原則M&Aの相談を受ける段階において機密保持契約書を締結し、その重要性を十二分に理解しています。

また、会計士、税理士、弁護士など士業と呼ばれる職業専門家は、業務上で課せられる善管注意義務を根拠に、そもそも全てのクライアントに対して守秘義務を負っているとされるため、ここから機密が漏えいすることは考えにくいと言ってよいでしょう。

一方で、最初の落とし穴が、身内である会社の内部にあることを認識すべきでしょう。

そもそも役員クラスになれば、経営に関する善管注意義務を理解しているものですが、一般の社員であればそのような意識がないのが通常です。例えば、会社のオーナーがM&Aに関する話を応接室でする、あるいは安易に電話で話をしてその内容が漏れ、従業員を通して社内あるいは社外まで広がることは意外に多いのです。

メールやファックス受渡し、作成した資料やコピーが露出しないよう資料の管理は徹底し、オーナーに秘書役がいる場合も、関与頂くことは極力避けたほうがよいでしょう。また、M&Aの初期段階においては、会社の定款や登記簿、株主名簿、組織図、また3年程度の税務申告書といった資料を用意いただくことになりますが、これら自体会社のオーナーは普段目にすることはないでしょう。それどころか、それらがどこにあるのか把握していないといってもよいでしょう。

私たちFA会社が、これらの資料・データを提出いただくことをお願いするわけですが、
その際には、できる限りまずはオーナーご自身で、あるいはたとえば経理責任者などできるだけ絞り込んだキーマンに、金融機関の融資枠の定期更新のためであるとか、税務署による定期的な監査が入りそうだといった理由で、データを収集していただくことをお願いしています。

これらの資料に基づいて、私たちFA会社は事前監査(プレデューデリ)を行いますが、どうしても不明な点や確認しなければならない事項が出てきますので、これを確認していく作業が必要になります。ここにおいても、できるだけ限られた最小限のメンバーを絞り込み、確認作業を行っていく必要があります。顧問税理士にもプロジェクトの開示をしないことをお勧めします。

このように、M&Aのプロジェクメンバーについては、関与する役員・社員をできるだけ絞り込み、最小人員で進めますが、次に外部の関係者もできるだけプロジェクトに関与させないことが、当然ながら重要となります。

 


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会社のオーナーがM&Aで会社を売却する意思が確認でき、
またプレデューデリにより現実的な価格目線の設定ができれば、相手候補先のリストアップと絞込みに入ります。

このとき、会社オーナーしては、できるだけ高い値段で売却したいという思いに駆られ、複数のFA会社にソーシングをお願いする、オーナー自身で知り合いの会社経営者に話を持ちかける、あるいは取引銀行の担当者や会社の顧問税理士などに相談する、といった行動をとられることがよく見られます。

しかし、これがもう一つのかつ大きな落とし穴になることがあります。

例えば、複数のFA会社がソーシングを行う場合、一定の競争原理が働くわけですから、会社オーナーにとっては選択肢が広がると思われるかもしれません。しかし、その場合FA会社としては競って、広くリストアップされた候補会社にコンタクトすることとなり、ここで機密漏洩が必ず生じるといっても過言ではありません。

また、候補先がバッティングすることもあり、そうなりますとこの会社の売却が出回り案件として認識されるようになります。一度出回り案件になりますと、高く売却できる可能性は極端に下がり、最終的には価格がつかなくなることもあります。

私たちの経験では、プレデューデリを行っていないFA会社が、後からソーシング活動だけ取り組む場合、
初期的な相手候補のリストアップ、つまりロングリストの作成において的外れなものになる場合が多いです。

また、こう言った会社は、そもそも会社オーナーの利益を優先する意識が低く、自社の手数料を第一優先で行動する傾向がありますので、どうしても機密保持が徹底されなくなると考えてよいでしょう。例えば、ランダムな相手候補会社に対して、機密保持契約書も取らずに、ネームオープンのインフォメーションメモランダムを開示する、あるいはブローカーを通して情報を拡散させてしまうといった状況です。

これに対して、FA会社とは、一定期間を設けて専任契約を結び、ロングリストの段階では、絶対に名前が特定されない案件情報による活動に徹する。ネームオープンついては必ず機密保持契約を結び、かつ複数並行しての交渉は原則行わない、ソーシングに紹介者あるいはブローカーを介させないことを原則とし、これが結果的には成功への近道であることを理解していただくよう、売手の会社オーナーにはお願いしています。

特に、複数並行しての交渉は原則行わない、つまりベストマッチと思われる候補先から
1社ごと順位交渉を行うことが、いわゆる急がば回れの結果に結びつくということです。

 


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最後に、M&Aのプロジェクトにおいては、時間管理が重要であることも付け加えておきます。

M&Aのプロジェクトにおいては、時には1年といった長丁場になることもありますが、
機密漏洩に限って言えば、時間が経てば経つほど機密漏洩のリスクが増していきます。

私たちの経験では、相談いただいてから少なくとも6ヶ月以内にクロージングするのが理想と考えます。

プロジェクトが長くなりますと、当事者である会社オーナーの精神的な負担が限界に近づき、
ご自身で機密漏洩の発端となってしまうこと多くあります。そのためにも、フェーズごとの日程目標を立てて進捗管理を徹底し、必要な際には私たちFA会社が売手にも買手にも大胆な意思決定を求めていくことが重要と考えます。

 








  一部のM&Aコンサル会社では、紹介者などを通した情報収集提供活動、同時・広範囲な営業活動など、機密保守意識の低い行動をとる会社があります。これら不用意な行動は、匿名といえども、推測に基づく情報漏洩や企業価値の低下の引き金になることがあります。一例を挙げればWEB上に匿名で「売り案件/買い案件」と一覧を出す会社は注意が必要です。私共の元にはセカンドオピニオンとして依頼を受けるケースが非常に多くなっております。