企業の評価手法
概要
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今回は、私たちファイナンシャルアドバイザリー会社(FA会社)がM&Aのプロセスにおいて、
どのような立場でFA業務を提供しているか、またその時の利益相反について考えてみたいと思います。

私たちFA会社は、売手または買手の会社どちらかと契約しM&Aに関するアドバイザリー業務を提供するケースと、
売手または買手の会社両方の会社と契約してM&Aの成立を目指すケースとがあります。

後者の場合は、しばしば「仲介業務」と言われることがありますが、当社では、原則両社の間に直接立って
M&Aを進めさせていただく方針を取らせていただいております。

それは、当社はその方が機密保持を徹底でき、また売手会社の情報に精通しているFA会社が一気通貫で買手と直接交渉する方が、なによりM&Aの成約率が高くなると考えているからです。

では、一般的にはどういう場合にどちらか一方の会社とだけ契約し、
またどういう場合に双方の会社の間に立って仕事をするのでしょうか。

よく言われるのは、日本において、中小規模の会社のM&Aにおいては仲介型のFA会社が比較的みられるが、
大型の案件になると、日本においても、また特に欧米においては、利益相反の問題があり
FA会社が売手・買手両社の間に立つことはない、と言った説明がなされるのです。

しかし、それは本当にそうなのでしょうか・・・。

 

 


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私がまだ若かりし頃、日本の大手事業企業の財務部に所属してM&Aに携り、
小規模な案件から比較的大型の案件にも携わっていました。

中でも、ある海外の上場会社を買収した案件では、ディールの規模が1,000億円近くと、
当時としては最大規模の買収劇で、かつ日本ではあまり見られない海外市場でのTOB案件ということで、
世間の話題をさらったものでした。

この案件でFA業務を務めたのは、ある外資系大手アドバイザリー会社で、
まさに売手と買手の会社の間に立ち、この案件の仲介役を担ったケースでありました。

この案件で、このFA会社が見せてくれたスピード力と対応能力については、
私にとってはまさに驚きであったとともに、売手・買手の双方の間に立ちながら利益相反のリスクを
まったく感じさせないものだったと記憶しています。

 

 


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M&Aのプロセスにおいては、会社の権利義務の継承や調整、またオーナーシップ変更に伴う交渉など、
会社に代わって意思表示や契約をしその効果を会社に帰属させることが必要となる場面が出てきます。

これらの法律行為は弁護士に委託することになりますが、
その場合は同一の弁護士が双方の会社と代理契約をするとなれば、それは双方代理となりますから、
当然受けることはできないことになります。

また、このような代理行為を、FA会社が行うことはありませんので、
FA会社が両社の間に立ったとしても、そこには双方代理と言う概念はありません。

一方において、M&Aのアドバイザリー業務は、売手会社のプレデューデリと価値評価、M&Aスキームや条件の提案、
提携相手先の探索と交渉、クロージングに向けての準備等を行いますが、特に相手候補会社の探索と交渉、
つまり相手候補会社のソーシングが、M&Aの成否を決める最も重要な業務となります。

この業務については、逆に弁護士が得意としている業務ではありませんし、実際行うことはありません。

弁護士が顧客から相談を受け、たまたまその弁護士の他の顧問先にM&Aに積極的な会社があった場合に、
これを紹介するといったことはあるかもしれませんが、弁護士が候補会社のロングリストを作成し、
これに何らかの方法でコンタクトし候補会社を絞り込んでいくような
戦略的なソーシング業務を提供するものではないのです。

むしろ、当社においては、M&Aの相談を受けた法律事務所より、
ソーシング業務を委託されることもあるのです。

このソーシング業務は、まさにFA専業の会社が得意とするもので、特に当社においては、例えば
売手の会社とFA契約した場合に、紹介者やブローカー、また金融機関や税理士など、
原則第三者を関与させることなく、候補会社への直接的なアプローチでこれを絞り込んでいきます。

その結果、当社は買手・売手の双方の間に直接立ってM&Aのプロセスを進めることになるのです。
その場合、冒頭に述べたような双方代理としての立場をとることではありません。

このように、当社は、会社の売手あるいは買手から相談を受けますと、
買手であればその希望や目的を、また売手会社であればプレデューデリを通して会社の状況を精通して、
ソーシング活動に入ります。

そして、売手・買手の双方の間に立って、M&Aを進めるわけですが、
そこでは売手としては手間をかけずにできるだけ高く売りたい、買手としてはリスクを最大限抑えてできるだけ
安く買いたいという、相反するニーズの間に立たされることになります。

これをもって、FA会社は両会社の間に立ってアドバイスすることはできないとシンプルな考えが示されることもありますが、それ自体は通常の商取引の仲介業務であって何ら問題にはなりません。

しかも、そもそもM&Aにおいては、ディール価格としての企業価値は会計データや株式市場の指標に基づいて、
理論的に裏付けされるものであり、そう簡単にFA会社による交渉で価格が上下するものではありません。

不動産物件のように、一定の相場が出来上がっているものではありませんが、
そもそも極端に安くあるいは極端に高い価格がつくということはないのです。

 

 


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また、若干穿った見方がされる場合もあります。

というのは、M&Aにおいて、買手側に立つFA会社の報酬体系は、売手と同様ディール規模に
一定の両立を乗じたものになっているのが通常です。

その場合、買手のFA会社も自身が受け取る報酬だけを考えた場合、買手会社の利益とは相反して
できるだけ高く買ってもらったほうが実入りが良いということになります。

よって、そもそもその意味で買手と売手の間には利益相反はないといった職業倫理を欠く論拠もありますが、
必ずしも無視できない現実かもしれません。

一方、これは日本ではあまり議論されない点ですが、
M&Aのプロセスにおいては、本来的にはより深刻な利益相反取引が存在すると私は考えています。

というのは、銀行あるいは証券会社系のFA会社が、グループ会社がM&Aの対象会社と金融取引あるいは証券業務を行っているにも関わらず、対象会社のFA会社として関与するという事例です。

例えば、売却会社に相当額の融資をしているある銀行系列の証券会社あるいは子会社が、売却会社のFA会社となってプロジェクトをリードするとします。この場合、このFA会社が、債権者であるこの銀行との交渉を含むディールを、売却会社の利益を最大限優先してまめられるかといえば、はなはだ疑わしいわけであります。

この利益相反取引は、特に欧米では以前より厳しい目が向けられてきたようですが、日本においては、
これまでまた現在もかなり緩いと言った感じが否めません。

日本においては、これまで間接金融が企業のメインの資金調達システムとして機能し、
また銀行による株式の持ち合いといった習慣が続いてきた中で、当事者である銀行そのものが
M&Aのアドバイザーとして関与してきた歴史があり、この点は大いに改善されるべきところと考えます。

その意味では、急速に成長している独立系のFA会社が、
今後も力をさらに蓄えて活躍の場を広げていくのではないかと見ています。

 

 

 








  一部のM&Aアドバイザリー会社では、仲介者やブローカーなどを介した情報収集提供活動、メール等で案件概要を広範囲にばらまく営業活動など、機密保守意識の低い行動が散見されます。これら不用意な行動は、案件概要が匿名といえども推測に基づく情報漏洩や、これに伴う企業価値の低下を引き起こす可能性があります。実際、そのような結果、私達の元にはセカンドオピニオンの依頼を受けるケースが非常に多くなっております。M&Aアドバイザー選びは、初期相談時の慎重な判断をお勧めいたします。